転職3社目は従業員2000人、店舗数100を越える中堅のサービス業だった。PCの台数は200台、サーバーは10台ほど。社員数も店舗も端末も増え続ける成長企業だった。
ここには自分は社内SEとして入社したのだが、それまでの2社はCOBOLの開発をしていた。コボラーというやつだ。黒い背景に緑の文字のCUI。今はそんなの誰も知らないだろう。案件だけはたくさんあり、上流も下流もなんでもやったが、給与も安く将来が不安になって転職。
社長は私の入社前から基幹系システムのリプレースに関わっていた。経営者ってのはITに詳しくなくても自分が作りたいものを語るのはとてもうまくて、新システムの要件定義は精力的にやっていたそうだが、稼働後に運用・保守ってのついてまわることが全く頭に無かったようで、運用費が高いというし、障害があるたびにベンダーと揉めていた。
私が入社したころには開発はほぼ終わっていて、COBOLしかわかんないし開発できねーよという前提で入社したものの、出来上がったシステムで問題があると、自分のせいにされることもたびたびあった。ほとんど八つ当たり状態。「開発しない社内SE」は経営者からすると重要な仕事には見えないのだろう。
「開発しない社内SE」の主な業務は、社内のシステムやら端末などのサポートである。いわゆるヘルプデスクだ。従業員は1000人近くになると毎日どこかで誰かのPCが壊れる。
入社当初は作ったシステムのことも、社内の状況もわからないから、一般的な知識で対応できるPCのサポートが一番やりやすい。
PCのメンテナンスでケースを開こうもんなら、目を丸くして驚かれる。分解できるんだ、すごーい!って。いや、ネジ止めしてあるだけだから。
自分ではなんでもない作業だが、知らない人からするとすごいらしい。おまけにPCの動作が改善されればさらに感謝の嵐。
そんな感じで実績を作っていくと社内では「PCに詳しい○○さん」と知名度は上がっていく。
システム開発では上司と顧客のご機嫌ばかりうかがってばかりいたので、とてもやってて気持ちの良い仕事だ。
しかし冷静に考えるとPCいじってるだけなんだよな。自分は趣味もPCなので、家のPCいじってるのと何が違うといわれると、何も違わない。
最終的にこの会社で社内SEを6年やった。そこでわかったのは「開発しない社内SE」ではシステム開発の経験はあまり活かせなかったことだ。その代わりに趣味でPCを組み立てたり、スマホやタブレットをいじったり、コンシューマ向けの知識の方がよっぽど役に立った。ただ、趣味でPC詳しい人がいきなり社内SEになれるかというとそれも無理で、それなりの規模の会社はだいたい自前の業務システムがあり、それに何かしら関わっていくことになるので、システム開発の経験が無い人は選考から漏れる可能性が高い。
社内SEになりたかったら新卒でシステム開発の仕事して、30歳手前で社内SEになるのが良いのかと思う。